年頭のグループ会議で私たちの練習スペースの呼称をアカデミアからキロンボに変えようという話をしました。
アカデミア(academia)という語は、ブラジルではいわゆるスポーツクラブなどを指す言葉でありまして、カポエイラのスポーツ的な側面の香りが強い言葉です。一方キロンボ(quilombo)は、かつて奴隷制の時代、逃亡した奴隷たちが主人の追っ手から身を守るために森林の中に築いた砦です。もっとも有名なものがズンビを首長としたパウマーリスですが、実際には大小さまざまの無数のキロンボが存在しました。今日でもその名残の集落が各地に存在します。
ほぼ1世紀に渡って征伐隊をはね返し自治を守りぬいたパウマーリスは、今日でも黒人運動のシンボルであり、ズンビが殺害された11月20日が黒人意識啓蒙デーに制定されています。なので今日キロンボと言うと、広い意味で抑圧的な社会システムに抵抗する拠点という意味を持つようになっています。
私たちも具体的な政治活動こそしていませんが、多くの人が生きづらいと感じている現在の日本社会でより自由に楽しく暮らしていく提案をカポエイラを通じてしています(少なくとも私、久保原個人的には日本で活動を始めた当初からそういう思いでカポエイラに取り組んでいます)。
さる1月20日に東京の目黒道場が閉鎖し、日本における希少なカポエイラの拠点のひとつとして、私たちの今あるスペースを守り抜く意義がいっそう高まったのを感じています。自分たちの居場所をキロンボ・ヴァジアソン(Quilombo Vadiação)と呼ぶことで、メンバーで力を合わせて砦を守り抜こうという意志を常に確認することができると思います。
※キロンボ・ヴァジアソンは、あくまでもスペースの呼称です。その中でアンゴレイロス・ド・インテリオール名古屋が活動し、ポルトガル語教室なども開かれているというイメージになります。